「……で、予想通りだったろ?」 「……飴細工一つくらい、どって事ないと思たんですけどねぇ」 「いやー、一食分賄えるくらいはあったろ。露店ってのは基本高いんだぜ?」 「ねぇ。油断してましたわ。……あのお金、戻ってきませんかねー、カジさん?」 「戻ってきませんー」 「けちー」 「いや当たり前だろ」 「……でも、僕が払わんでも、どうせ奢ってあげるつもりやったんでしょ?」 「それを横から払うっつったのはあんたじゃん」 「それ、なかった事になりませんかねー」 「なりませんー」 「いっそその記憶を改竄出来ませんかねー」 「出来ませんー」 「けちー」 「俺は元々ケチだっての。何、聖人かなんかだと思ってた?」 「お人好しな鍵屋さん兼飴職人だとは思てますけどね」 「うん合ってるけどちょっと違うかな」 「ウソウソ。嘘ですからコーヒー片付けるのちょっと待ってぇええ!」 「だってもう帰るんだろ?」 「そんな殺生な! ええやないですかも少し居させてくれたってー」 「じゃあもっかい聞くけど俺は何?」 「とっても優しい探偵さんですー!」 「ハイ正解」 「……包帯のお兄さんに相談してこよかなー。カジさんが冷たいーて」 「歪ならしばらく図書館の依頼で留守だぜ」 「……じゃーお面の弟さんにでも」 「真遠歌にあんたの本業がバレるのとどっちが良い?」 「……」 「大体さー、使い込むあんたが悪いんじゃん。安定した収入の無い仕事だって自覚、ある?」 「モチロン」 「それで何で貯蓄とか考えないのさ。どうせアレだろ、また動く掃除機ロボットとか買ったんだろ」 「何、カジさんってばエスパー?」 「違ぇよ私立探偵だよ。つか買ったんか」 「買いましたよ」 「……また?」 「……また」 「一回で懲りろよ!?」 「仕方ないでしょー! 今度のは自動で壁を避けたり引っ掛かったら後戻りしたりする機能付いてんですよー!」 「あんたの部屋はそれ以前の問題だろ!?」 「それは言わないお約束!」 「……当然の事だけどさ、そいつら使いたいんだったら床の上に物を置かないようにしないと出来ねえよ」 「だってタンスにも押し入れにも入りきらんのですもん。床に置くしかないでしょー」 「じゃあ減らす事だね。物を」 「それは無理ですわ」 「何でそこ即答なのよ。諦めな」 「カジさんやっぱり冷たいお人やわぁ」 「あんたが呆れさせるんだよ、あんたが」 「ちぇー。……で、結局何してはるんです?」 「ん?」 「冷蔵庫なんか覗いて。飲み物ならここにあるのに」 「夕飯作るのに何が残ってるか見てんだよ」 「へー。やっぱカジさんが作ってはるんですか?」 「おう。流石にあの二人にゃ料理はムリだろ。……トオルちゃーん、ちょっとお使い頼まれてくれる?」 「ハイハイ何でもさせていただきますよー」 「じゃ、麺三玉な。歪まだ帰ってこないらしいから、俺と真遠歌とあと一人」 「わーいカジさん大好き!」 「……あんた、ほんっとに調子イイ奴だな」 「ボクはいつでも本気ですよー?」 「はいはい。判ったから早く行ってきなって。夕飯遅れたらあんたの所為だからなー」 「ハーイ。やっぱりカジさん大好きー行ってきまーす」 「だから判ったって。……ったく、俺も大概甘いねぇ……」 PR ※ Comment
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