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オンラインノベルRPG「螺旋特急ロストレイル」の個人的ファンサイトです。リンク・アンリンクフリー。

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プロフィール
HN:
カツキ
性別:
女性
自己紹介:

ツクモガミネットに愛を捧ぐ(予定)のPL。
アクション・スプラッタ系のシナリオを好む傾向にあり。超親馬鹿。


当家の面子
鰍(カジカ):
コンダクター。私立探偵のはずだけど現状はほぼ鍵師扱い。銀細工とか飴細工が得意の兄さん。名前がコンプレックス。

歪(ヒズミ):
ツーリスト。三本の剣を携えた、盲目の門番。鋼の音を響かせて舞う様に戦う、人と同じ姿の異形。

灰燕(カイエン):
ツーリスト。白銀の焔を従える、孤高の刀匠。刀剣と鋼の色を愛し、基本人間には興味が無い。人として危険なドS。
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或るツーリストの追憶




 雨が、降り注ぐ。鉛色の空から堰を切った様に溢れ出すそれを肩で受け止めて、男は佇んでいた。名も知らぬ白い花が雨粒の重みに耐えきれずに撓み、鈍い色を光らせて雫を飛ばす。その様をただ、淡い金の視線が捉えている。
「白待歌」
『――御傍に。灰燕様』
 名を呼べば、白銀の声が返る。同時に身を打ちつける雨の感触が無くなった事に気付き、緩慢な動作で振り仰いだ。
 空は鈍く、雨は止め処無い。
「構わん」
 主の言葉を的確に察し、雨を遮っていた不可視の覆いが取り除かれる。再び降り注ぎ始めた雫、肩を濡らし温度を奪うだけのそれを、男は何故か愛おしいと思った。
 草木を撓らせ、大地を潤す、普遍の循環。
 白銀に燻る刃を沈めた時の、躍る水面。
 そして何よりも、男の知る限りで唯一の、変わりなきもの。
 此処は何処か、と男は再度視線を巡らせた。先程まで彼が居たはずの鍛冶場は既になく、名も知らず見覚えも無い草木に囲まれ雨に打たれているばかり。問おうにも人の姿は無く、ただ所在無く立ち尽くすしか出来なかった。
 ――彼の刀は。
 不意に脳裏を掠めた疑問に、雨に濡れた両掌を見下ろす。鞘と鍔、柄を与えて魂を宿すはずだった彼の灰鋼は、水の溜まる地面にも、己の両掌にも、何処にも存在していない。
 完成しない侭放り出されてしまった刃の事を思う度、唇を噛み締める。せめて、この異変も、彼の完成を見届けてからにしてくれれば良い物を。今更考えても詮無き事と解ってはいるが、それでも悔やまずには居られなかった。
 彼の鋼、打つ度に響いた彼の高い音、焔に灼かれて輝く彼の白銀、その全てを現実の様に思い描く事が出来る。――それなのに、其れが此処には無い。
『灰燕様』
 ふわり、と男の右手を白焔が覆う。熱を一切感じさせないそれは、激しい雨の下でも消える事無く在り続け、男をいたわる様に煌めいた。
 抱き締められる様にして、声が降る。
『何を憂う事が御座いましょう。白待歌が御傍に居りますれば』
「……そうじゃな」
 柔らかなその感覚に、男は金の目を細めて笑んだ。
 鋼が在れば、また幾らでも灼く事が出来る。男にとって必要なのは、この美しい色彩だ。
 己の灰鋼、己の魂の一欠片を灼く、唯一無二の焔。
 それさえ在れば、場所が何処であろうと構わないのだろう。
 ぐ、と応える様に拳を握れば、掌中の白焔が軽やかに躍った。
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