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オンラインノベルRPG「螺旋特急ロストレイル」の個人的ファンサイトです。リンク・アンリンクフリー。

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プロフィール
HN:
カツキ
性別:
女性
自己紹介:

ツクモガミネットに愛を捧ぐ(予定)のPL。
アクション・スプラッタ系のシナリオを好む傾向にあり。超親馬鹿。


当家の面子
鰍(カジカ):
コンダクター。私立探偵のはずだけど現状はほぼ鍵師扱い。銀細工とか飴細工が得意の兄さん。名前がコンプレックス。

歪(ヒズミ):
ツーリスト。三本の剣を携えた、盲目の門番。鋼の音を響かせて舞う様に戦う、人と同じ姿の異形。

灰燕(カイエン):
ツーリスト。白銀の焔を従える、孤高の刀匠。刀剣と鋼の色を愛し、基本人間には興味が無い。人として危険なドS。
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10題その3、「死なれちゃ後味悪いんだよ」。









「――昇太郎ッ!」
 酷く狼狽した様な声が聞こえ、修羅はただ、ゆっくりと視線を上げた。
 人の二倍はあろうかと言う魔獣が、爛々と目を輝かせて跳躍し、重力に従って修羅へと迫る。修羅の視界は、醜い死神に塞がれた。
 腐り切った色の歯茎が、鋭い牙が、剥き出しになって眼前に迫る。
 死が手の届く位置にやってきているはずなのに、修羅は身動き一つ取らない。それどころか――構えを解き、刃を下ろした。どうせすぐに再生する、絶望にも似た事実を思い出しながら、牙を待つ。

 ――瞬間、銀色の突風が吹いて。

 目の前を覆う闇が、二つに切り裂かれた。

 魔獣が切り裂かれた隙間に見えたのは、飄々とした神の、常ならぬ表情で。
 それを認めて、修羅は微笑した。幼く無垢な、全てを受け容れる赤子の如き微笑。
 魔獣が、崩折れる。神は着地して、刀をモップに仕舞った。
「――馬鹿が。何笑ってんだよ」
 そして憮然とそう言うから、修羅は更に笑う。
「お前にしては珍しいのぉ、そないな顔して」
「俺が? どんな顔したってんだよ」
「えらく必死そうじゃったぞ」
 神は一度舌を打ち、
「……残念だったな。神は死なねェ。『必死』なんてあるはずもねェだろうが」
 地面に転がったフィルムを拾った。手の中で一度くるりと回してから、修羅へと投げ、踵を返す。修羅はそれを難なく受け止めて、神に並んで歩き出した。
「知っとるわ。じゃけぇ珍しい言うたんじゃろが」
「……そんな笑う様な顔してたかよ」
 髪を掻き混ぜて、ぽつりと呟く。
 魔獣の牙を目前にしながらただ立ち尽くしていた修羅を見て、一も二も無く飛び出していた。馬鹿が、とも、どうせアイツは再生するから、とも考える余裕はなかった。ただがむしゃらに飛び込んで、魔獣を切り裂いた隙間から修羅の微笑を認め、怒りよりも先に安堵していた。――そんな自分に気付いて、何か、無性に腹立たしくなったけれど。
「いや、違う。面白かったんやない。――……なあ、何で俺を助けたん?」
 きっと答えを知っているだろうに、修羅はそう問うた。神は小さく俯いて、言葉を捜す。
 死なせたくなかった?
 否。
「――死なれちゃ後味悪いんだよ」
 精一杯の虚勢。それに気付いたかは解らないが、修羅は声を上げて笑い出した。

 

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