忍者ブログ
オンラインノベルRPG「螺旋特急ロストレイル」の個人的ファンサイトです。リンク・アンリンクフリー。

WRITE | ADMIN

カレンダー
04 2024/05 06
S M T W T F S
1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31
リンク
プロフィール
HN:
カツキ
性別:
女性
自己紹介:

ツクモガミネットに愛を捧ぐ(予定)のPL。
アクション・スプラッタ系のシナリオを好む傾向にあり。超親馬鹿。


当家の面子
鰍(カジカ):
コンダクター。私立探偵のはずだけど現状はほぼ鍵師扱い。銀細工とか飴細工が得意の兄さん。名前がコンプレックス。

歪(ヒズミ):
ツーリスト。三本の剣を携えた、盲目の門番。鋼の音を響かせて舞う様に戦う、人と同じ姿の異形。

灰燕(カイエン):
ツーリスト。白銀の焔を従える、孤高の刀匠。刀剣と鋼の色を愛し、基本人間には興味が無い。人として危険なドS。
最新コメント
アクセス解析


忍者ブログ [PR]
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。




背後さんの許可を頂いたので、ストックしておいたものをUP。
悪魔さんをお借りしましたー。トライアスロン後日談。というか、直後談?












 親友なのかと聞けば、揃って首を横に振る。
 兄弟みたいだなと言えば、一人は真っ赤になって否定するし、一人は腹を抱えて笑いながら否定する。
 ならば何なのだと聞けば、揃って首を傾げる。あるいは、如何でもよさそうに話を逸らす。

 彼らの関係性は、誰一人として正しく説明できない。

 

 真冬のトライアスロンも無事――とは一切言えないだろうが――終了し、競技中見つけた知り合いと共に、ディズは帰路に着いていた。
「……大丈夫か、あんた」
「んー。多分?」
「多分って……あんたはいつもそうだよな」
 眼帯に覆われていない方の目を細め、隣を歩く男が呆れた様に呟いた。ディズはそれに応える様に、いつもの楽天的な笑みを浮かべる。
 慣れない自転車で大転倒して出来た傷があちこち痛む。転倒の瞬間に感じたあの寒気は何だったのだろうと、今も首を傾げずにはいられない。何か、男だか女だか解らない声が聞こえた気がするのだが。
「何だったんだろうな? アレ」
「……俺に聞かれても困るんだが」
「ま、いいや」
 ディズは過去に一切こだわらず、常に前だけを見続ける。楽観的なのかただの馬鹿なのか判断付き難いが、彼の笑顔は相手にも真直ぐ前を見させる、不思議な魅力があった。いいやの一言で全てを水に流す事が出来る、不思議な魅力が。
 レイドはつい最近その事を知ったので、僅か苦笑するだけに留めておいた。
「――ん?」
 ふと隣を歩いていた悪魔が立ち止まり、ディズもそれに合わせて足を止める。
「どした?」
「あれ、あんたの知り合いじゃないのか」
「……あ、ホントだ」
 レイドが指差す先を目を細めて見つめ、ディズは合点した。
 彼らが歩く道の先に、颯爽と立つ、ふたつの影。
 武人らしく毅然と背筋を伸ばし立つ修羅と、気怠げに背を丸めた、しかし何故かそれが良く似合っている掃除屋。
 その姿を認めて、ディズは擦り傷の目立つ頬に笑みを浮かべた。
 気付かぬ内に歩みが速くなり、走りに変わっていく。両腕を大きく振って、彼らの元へと急ぐ。
 声を掛けようかと思ったその時、ふたりが、俯いていた顔を上げた。
 銀と翠と紫の四眸が一斉にディズを見、そして――

「このッ、阿呆がァアッ!!」
 見事なダブルラリアットが、決まった。

◇ ◆ ◇ 

「いってぇー……」
「あんだけ派手に転んだんだ、当たり前だろうが馬鹿」
「や、そっちじゃなくってさー」
「ならどっちなんよ? 相変わらずお前は変な奴やのぉ」
「変って言うかさー……もういいや」
 鮮烈なラリアットを浴びて見事に倒れたディズは今、ふたりに肩を借りて歩いている。
 先ほどまで一緒にいた悪魔は、連れの少女とその義姉を見つけた途端血相変えて飛び出して行った。あの小娘、などと憎憎しげに呟きながら。
「……なぁ、ミケー」
「何だよ」
「……ロリコン? って何だ?」
 ぽつりと至極不思議そうに首を傾げたディズを、ミケランジェロが瞠目して見やる。
「はぁ? ……お前、それ何処から聞いた?」
「んー、何かレイドが叫んでる。『誰がロリコンだこの小娘ェェェ!!?』って」
 天使の少女とその義姉の声は高く聞き取りやすく、悪魔が喉を潰さんばかりに叫んでいる為、3人のやりとりは今もディズの鋭敏な聴覚に届いている。だが、義姉と悪魔が声高に叫びあうその言葉だけが、彼には理解出来なかった。
「……そうか、あの悪魔ロリコンだったのか」
「って何納得してんだよミケー。ロリコンって結局何なんだよー」
「……ディズ」
「ん? どしたショータ?」
「俺もその言葉の意味は知らんのやけど、……知らん方がええ気もするぞ」
「そうそう。純粋なお前達は知らなくていい言葉だ」
「……何や、その言い草ぶち腹立つのぉ」
「腹立つよなー」
「俺は腹立たねェからいいんだよー」
「……お前、いっぺん殴ってええか?」
「うわ、怖ェなお前何だよ!」
「じゃかぁしいッ、ちょぉ黙って殴られろ!」
「嫌に決まってんだろうがこの怪力!」
「って二人ともオレを挟んで喧嘩すんなよー! 耳が痛くなるだろ?」
 ふたりの肩に手を回しているから耳を塞ぐ事も出来ず、ディズは困り果て項垂れた。このふたりは言い合いを始めると中々終わらない。鋭敏で繊細な聴覚は大人気ないふたつの声を余さず拾い上げ、彼の脳をシェイクする。
 だが、ディズの口許は緩んでいた。
 ディズはふたりと歩くのは嫌いではない。否、むしろ好きと言っても良かった。
 もちろん、こうやって肩並べて歩くのも楽しいよなーなんて呟けば、両側から冷たく返されてしまうのだろうが。その些細なツッコミでさえ、ふたりは同時に返すのだろう。
 そう思うと微笑ましくて、思わず笑みが零れていた。
 笑みに気付いて、ふたりが訝しげな視線を向ける。それさえ全く同時で、ディズは更に笑い声を上げた。何だかんだで、このふたりは本当に息が合っている。
「……って、何笑ってんだよ、ディズお前」
「んー? 別に」

 親友と呼ぶには刺々しいし、近過ぎる気もする。
 もちろん血が繋がっていないから、兄弟であるはずもない。
 未だディズにも、このふたりの関係性を説明することは出来ないでいる。
 だけど。

 なんであろうと構わないと思う。

 彼らがディズにとっての親友である事に、変わりはないのだから。

 

PR


※ Comment
HN
TITLE
COLOR
MAIL
URL
COMMENT
PASS


※ この記事へのトラックバック
この記事にトラックバックする:


<< 10題6 | HOME | 10題4 >>



Powered by 忍者ブログ  Design by まめの
Copyright © [ 無声慟哭 ] All Rights Reserved.
http://asurablue.blog.shinobi.jp/