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オンラインノベルRPG「螺旋特急ロストレイル」の個人的ファンサイトです。リンク・アンリンクフリー。

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プロフィール
HN:
カツキ
性別:
女性
自己紹介:

ツクモガミネットに愛を捧ぐ(予定)のPL。
アクション・スプラッタ系のシナリオを好む傾向にあり。超親馬鹿。


当家の面子
鰍(カジカ):
コンダクター。私立探偵のはずだけど現状はほぼ鍵師扱い。銀細工とか飴細工が得意の兄さん。名前がコンプレックス。

歪(ヒズミ):
ツーリスト。三本の剣を携えた、盲目の門番。鋼の音を響かせて舞う様に戦う、人と同じ姿の異形。

灰燕(カイエン):
ツーリスト。白銀の焔を従える、孤高の刀匠。刀剣と鋼の色を愛し、基本人間には興味が無い。人として危険なドS。
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ハロウィンSS後編。



「で、ディズ、何しに来たんだよ? んな格好で」
「ん? あーそうそう、ミケには言ってなかったっけ。“Trick or Treat”!」
「……男二人の家に菓子があると思うか?」
「いや、まったく」
「キッパリ言うたな。それじゃったら何で聞いたんよ」
「えー、だって今日の挨拶みたいなもんじゃん、コレ」
「……ほうなんか?」
「そうだろ?」
「……何で俺に聞くんだよ、二人して」
 キラキラとした子供の様、あるいは子犬の様な銀の瞳と、乾き切った荒野に似て無垢な、銀と翠の異色両眼に同時に見つめられ、ミケランジェロはひとつ溜息を吐くと、口元を歪めてソファから立ち上がった。一歩、二歩進み出ると、振り返って天井を仰ぎ見る。
「ま、残念ながら菓子はないが――折角来たんだしな、面白いモン見せてやるよ」
 両手に嵌めていた軍手を外す。その右掌に残る、円形の傷痕を目にした昇太郎が呆れた様に眉を顰めたが、ミケランジェロはただ小さく笑んでみせるだけだった。
 白く繊細でしなやかな左手を緩く握り、指揮に似た仕草で天井へと向ける。
 瞼を閉じ、ふ、と息を吐きながら左手を開けば――瞬間、天井が輝いた様な気がした。
「?」
 ディズが訝しげに、天井を見上げる。それにつられるようにして、昇太郎も視線を上げた。
「……わッ」
「ほぉ……」
 気がした、ではなかった。実際に天井が――正確には、天井いっぱいに描かれたグラフィティアートが、黄昏よりも暖かな橙色の光を放っている。それらは菓子やお化けの一つ一つを包み込む様に輝き、やがて、ゆっくりと浮かび上がるように立体を得て行く。
 ぱぁん、と一つ、軽い破裂音が響く。小さなクラッカーを引いた時にも似た、明るい音。それと同時に、光が強くなり、立体を得た絵達が一斉に天井を飛び出した。
 降り注ぐ、菓子の雨。部屋を狭しと飛び回る、お化け達。
「すッ……」
 ディズが、感嘆の声を上げようとして、飲み込む。いっぱいに開かれた銀の瞳が、二三度瞬いた。その眼前をシュガーシロップを被った顔のある南瓜が通り過ぎて、微かな甘い匂いにくすぐったげな笑いを零す。
「すごいな」
 飲み込んだ言葉を、もう一度改めて口にする。羽根よりも緩やかな速度で落ちて来るポップな柄のキャンディを一つ手にとると、目を輝かせてミケランジェロを見やった。
「なあ、コレ食えるのか!?」
「食えねェ程下手な絵を描いたつもりはねェぜ?」
「ホントか? じゃあじゃあ、貰ってって後で食うよ!」
 そう言ったディズが、何処から取り出したのか蜘蛛の巣柄のナップサックに喜々として菓子を詰めて行くのを暖かい目で見守りながら、ミケランジェロは昇太郎に声を掛けた。
「……で、お前は何してんだ」
「いや、」
 昇太郎が、無垢な子供の仕草で首を傾げる。
いつの間にか彼はソファに腰を降ろしていた。先ほどまではミケランジェロと同じように、子供のようにはしゃぐディズを優しく見守っていたはずなのだが、今はとかく不思議そうな目で目の前のジャック・オー・ランタンを見つめている。
「これ、食えるんじゃろうかと思うてのぉ」
「……よく見ろ。怯えてんぞ、そいつ」
 そのずれた発言に、思わず溜め息を吐く。ジャック・オー・ランタンもまさか食べ物扱いされているとは思っていなかったようで、表情はそのままだが微かに身を震わせ、ふよふよと後退した。
「じゃって、ほれ、南瓜じゃし」
「どう見たって中身くり抜かれてんじゃねェか。皮まで食う気かお前は」
「何ね、食べ物と違うんか――なら、あれは?」
「……お前なァ、何でもかんでも食い物扱いするのはよせ」
 指を差された小さな蝙蝠が、慌ててディズのナップサックの中に隠れる。その直後に袋の口を閉じられ、出られなくなってキーキー鳴いているのを生温い目で見やって「飛んで火に入る秋の蝙蝠って所か」などと考えながら、緩やかに降り注ぐクッキーを一つ掴んで昇太郎に手渡した。
「何ね」
「そんだけ食い物しか考えられないって事は、腹減ってんだろ。食え」
「……? ほうなんか?」
「そうだよ。……ほんッとに自分の事となると鈍いな、お前は」
 首を傾げながらも大人しくクッキーを受け取り口に運ぶ昇太郎に呆れながら、ミケランジェロはディズに目を向ける。ナップサックに菓子を詰め終えて、満足げにそれを見下ろしている、オペラ座の怪人。その仮装と仕草とのギャップに、思わず口元が緩んだ。
「この後はどうするんだ、ディズ?」
「んー? っとな、ケトに呼ばれてるんだ。一緒にパーティしないかって」
「ケト? ……あー、お前んちに居る羽の坊主か」
「そうそう。そのついでに、色んなトコでお菓子貰ってってから行こうかなって思ってんだけど。誓のトコとか、サクヤのトコとか」
「……それだったら、今袋いっぱいにしない方がいいんじゃねェか?」
「ん? …………あ。……どうしよう」
 今気付いた、と言わんばかりの表情で、ディズがぎゅうぎゅうに詰め込まれたナップサックを見下ろし眉を下げる。その間の抜けた様子に小さく笑みを零し、ミケランジェロはナップサックを拾い上げた。袋の口を緩めてやれば、閉じ込められた蝙蝠が勢いよく飛び出して来た。
「こんなに欲張らなきゃァいいだけだろ? 半分くらいにしとけよ」
「えー、でも」
「心配しねェでも、取っといてやるって」
 言いながら、ぽいぽいと手際よく日持ちしそうな菓子を選び出して机に選り分けていく。ナップサックに大分隙間が出来たあたりでディズに返してやると、ディズは渋々といった様子で受け取って、き、とミケランジェロを見上げる。
「ホントだよな? 食べちまったりしないよな!?」
「あァ。大丈夫だから、そんな必死になるな」
「うー……」
 まるで年の離れた弟を相手にしているようだ、とミケランジェロは苦笑いを零す。未練がましく机の上の菓子をいつまでも眺めるその姿は、『怪人』にはとても見えなかった。
「ショータぁー」
「何ね?」
 昇太郎が微笑を浮かべながら、机の上の菓子を集めて手に取る。
「ミケが食べようとしたら、絶対に止めてくれよ!」
「おいおい、大丈夫だっつってんじゃねェかよ」
「えー、だってミケいまいち信用出来ねぇもん」
「ッはは、そうじゃの。タマの事じゃし、信用出来んのも解るわ。任しとき、万が一手ぇ出しよったら、ぶん殴ってでも止めたるけぇ」
「やった! ありがとなー」
「……お前ら……覚えとけよ」
 ぐったりするミケランジェロを尻目に、昇太郎がからからと明るく笑い、菓子を保管する為にキッチンへと姿を消した。それを見送って、ディズが小さく息を吐く。その穏やかな、安堵とも取れる気配に、ミケランジェロが伏せていた顔を上げた。
「……でも、ありがとな、ミケ」
「は? 菓子の事か? それだったら別に――」
「ん、それも感謝してんだけど、そうじゃなくって」
「何の事だよ?」
 言葉の意味が解らず、ミケランジェロが目を瞬かせてディズを見やると、銀目の怪人は右手に提げたトランペットでキッチンの方角を指し示して微笑んだ。
「何つうか、ショータ明るくなったじゃん。ミケのお蔭だろ?」
「……俺は別に何もしてねェよ。あいつが自分で乗り越えたんだ」
「それでもさ、ミケのお蔭もあると思うんだ。ああやって楽しそうなショータ見れて、オレも嬉しいし。ありがとな」
「……お門違いな気もするが、まァそこまで言うなら、有難く感謝されとくぜ」
「へへッ」
 ミケランジェロが面映ゆそうに目を細める。無垢な修羅の変化を誰よりも嬉しく思っているのは自分だと言う自信こそあれど、同じように喜んでくれる誰かが居ると言うのは嫌な事ではなかった。
 後は、その思いの全てが、修羅に届けばいい。届いて、あの男が、照れながらも笑ってくれれば、それでいい。
 そこまで考えて、ふと、怠惰な紫の双眸を壁の時計に向けた。
「……それよりお前、時間はいいのか」
「ん? ……あ、やっべ、とっくに過ぎてるッ!?」
「やっぱりな。とっとと行ってこいよ」
「そうする! じゃーなッ!」
 慌てて飛び出して行ったディズに苦笑しながら手を小さく振って、開け放されたドアを閉める。
「……さて」
「ん?」
 壁に描かれたグラフィティアートを眺めぽつりと声を洩らすと、戻ってきた昇太郎が首を傾げた。
「明日になったら、これ全部消さねェとな」
 天井は全て具現化させた後なので普段の壁の色を取り戻しているが――壁は未だに、紫とオレンジのままだった。流石に11月になったら消さなければいけないだろう。こう言うものは、季節が過ぎたらすぐに片付けてしまうに限る。
「ほうか……そりゃぁたいぎいのぉ?」
「……他人事みたく言ってるが、」
「?」
「残念ながらお前も手伝うんだぞ」
「はぁ? なして俺が手伝わないけんのよ。描いたんお前じゃろうが」
「そう言うなって。明日来た奴にも手伝わせるから」
「……それは解決になっとるんか?」
「いいだろ、一人でやるよりは」
「二人、じゃろ。さり気なく自分を抜くな」
「……チッ、ばれたか」
「ばれんとでも思うたか、ド阿呆が」
「あー、解った解った。明日は全員巻き込んで大掃除な。決定」
「……何じゃろ、うまく丸めこまれた気ぃするんじゃけど」
「気の所為だ、気の所為」
 腑に落ちない、と言った顔で腕を組んで考え込む昇太郎を横目で見やり、壁に近付くと両手をグラフィティアートに当てる。紫とオレンジの色彩を消し去った後の白い壁を思い出し、次は何をモチーフにして絵を描こうか、と目を閉じて思い描く。

 会話の、音の無くなった事務所の外から、楽しげな喧騒が微かに聞こえてくる。
 百鬼夜行は、未だ続いているようだ。




***

つ か れ た ……!!
topi絵師様に描いていただいたハロウィンピンのSS(サイドストーリー)的感覚で描いていたのですが、思った以上に長くなってしまいました。
我が家では去年のハロウィン以前から実体化していた三人。去年は殺人鬼と殺し合ってたり蛇男の仮装で某氏に悪夢を見せてたり大型犬化してたり、三者三様のハロウィンだったのですが、今年は三人でワイワイやっててほしかったのです。そんな願望。

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